バイラルメディアを一から作り運営して気づいた、メディアの真値

あるシェアハウスから生まれたwebサービスから考えるバイラルメディア

 

 

バイラルメディアの価値は何か。

もうこの議論については既に論じられる機会も減ってきている感がありますが、改めて!

本エントリーではまずは、業界に精通したプロフェッショナルの意見を振り返り、その上で自らのバイラルメディア運営の経験を踏まえて持論を書きます。

これまでのバイラルメディアの議論

昨年2014年の春先に大量に乱立し始め、続々と潰れていったバイラルメディア。そんなバイラルメディアは夏頃には既に大方のものがなくなるのでは?と予想されていました。

そんな中、秋に大きな話題を呼んだ、”メディア野郎” 田端信太郎氏のエントリー「バイラルメディアは二重の意味でダサい」で、田端氏は以下ように指摘しています。

(バイラルメディアは)二重にダサいと思う。ほとんどのバイラルメディアはどこかで見たような記事の劣化コピーである点。もうひとつは、経済合理性がないというか、儲からない点。

一方肯定派の意見。サイバーエージェント渡辺将基氏のエントリー「バイラルメディアはゴミじゃねぇんだよ」でこのように述べています。

(バイラルメディアは)「価値があるのに埋もれてしまっているコンテンツ」を大きく広めることができる

その他、徳力氏のエントリー佐々木氏のエントリーでは、アクセス等に関する観点から従来のwebメディアとの違いについて綴られています。

どの意見もさすがはメディアのプロ、もっともな意見ばかりですね。

上記を踏まえ、これまで多く議論されているバイラルメディアに関するその価値を、小規模ながらメディアを運営している経験談をば、、

 

泣けるメディア CRYFUL

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僕らが運営しているのは、涙に特化したメディア CRYFUL です。昨年5月に立ち上げ、2015年2月28日時点でFacebookページのいいね数は1,253、最もバズったコンテンツは4,000いいね越え、月間PVは多いときで30万PV、現在も月間10万PV近くあるメディアです。

まずCRYFULの設立についてお話しします。少々長くなりますが、お付き合いください。

CRYFULは、あるシェアハウスの共同の一室に住む3人ではじめたサービスです。

 

 

夜な夜な生活を共にして、互いの事をよく知っているメンバーが、それぞれの強みを活かしてwebサービスをやろう!と言ったのがきっかけになっています。

日々のコンテンツ作成は全員で行うものの、プロモーション/PR、Webディレクション、コンテンツ管理、と各自のスキルが活かし担当を設けたチームでした。

 

結成時、あるメンバーがこういったのを覚えています。  自分はこれまで親に言える様なことができていなかった。親に誇れるようなサービスが作りたい と。

少々きれい事のようで恐縮ですが、そんな涙という優しさで 身近な人やネットで接する人を震撼させたい という思いと、webビジネスの知見を広げたい、という2つの共通認識をリリース当初から僕らは持っていました。

 

当初のCRYFUL

CRYFULはスタート当初は「多くの人に見てもらうサイト」を目指していました。身近な知り合いに口コミで広めてもらったり、GHORUSでTwitter上で拡散したり、毎晩深夜0時をCRYFULタイム(1日1回だけ新しいコンテンツを配信する)とし、限定感を持つ形式をとってみたり…と色々な工夫をしてはじめました。

コンテンツは元々自分たちで知っていたもの(CMやプロモーション映像)や、メンバー全員が海外経験があったことから、海外サイトから持ってきて翻訳したものを紹介していました。

3人がキュレーターであったため、コンテンツの粒度についてもwebに知見のあるメンバーを中心に、タイトルやサムネイル、キャッチコピーを分析し最適化していくなど、趣味で始めたサービスですが、本格的に取り組んでいきました。

しかし当時はバイラルメディアの大熱戦の最中。半日単位で同じコンテンツが各メディアにならびます。いわば “パクリ合戦” が横行していました。(かくいうCRYFULも、涙に特化したメディアとして感動する・涙に関する秀逸なコンテンツはすべて取り揃えておくべき、という考えがあり「これは本当に泣けるな」と判断したものは、PRポイントを変えて使わせて頂いたこともあります。)

どうしてもバイラルメディアでは各メディア、似たコンテンツが立ち並んでいきます。

以前、サイバーエージェント社のセミナー「”バイラルメディア祭り2014夏” ~2015年のメディアの形を考える~」で語られた通り、コンテンツの単なる流用でもバイラルメディアはそれなりのものができてしまいます。(これが田端氏の指摘する、劣化コピーかもしれません。)

CRYFULの当初のスタートもそこでした。

 

キュレーションの価値

ある時、作成したまとめコンテンツが、サムネイルやキャッチコピー含めて、丸パクリされたことがありました。

「まだこの様なまとめはどこのメディアも作っていないな…ふふ」とほくそ笑んでいた僕は翌日そのサイトを見つけると、すぐさま該当サイトに抗議の問い合わせを申し立てようとしました。この時は、丸パクリはないだろう!と思ったのです。

しかしそんな時、こんな言葉をメンバーにもらいました。

それは「我々のキュレーションも、そもそもコンテンツ元制作者の価値を流用しているのに過ぎなくて、それによって作られたコンテンツをパクリと言う事はできないんじゃないか」というもの。まさに正論でした。

記事の内容はまとめに関するものでしたが、情報をまとめて一つにする事(キュレーション)に価値がある、僕はそのとき本気でそう考えていました。しかし、その数十分、数時間なりでキュレーションした事を一つの価値と主張するのは、明らかに目指すところが低過ぎる という指摘はまさにその通りでした。

そんな一件もあり、CRYFULも少々変革を迎えていきます。

 

バイラルメディアの真価

CRYFULは小規模メディアです。そのため、同じコンテンツを掲載しても、巨大バイラルにすぐに流用され、全く同じ内容でも、アクセス数は雲泥の差になります。

他の巨大バイラルメディアにも少しはベンチマークして頂いていたのか、僕らが海外メディアから掘り起こしたようなマニアックなコンテンツも、すぐにどこかのバイラルに流用され、それは各バイラルメディアに1日にして広がっていきます。

そんな過程で気づいてきたのが “バイラルメディアの真価” です。

端的に言うと(バイラルメディア)は元コンテンツのPRにこそ真価を発揮するということ。そして、それはいくつかの巨大バイラルがそのリーチ数の多さを活かした時に効果が最大化される。

一素人の僕が言うのは大変に僭越ながら、渡辺氏の意見はまさにその通りだと思います。

また、メディア全般について、田端氏は著書「MEDIA MAKERS」でこのように述べられています。

メディアで報じられる=生きた証が記憶されるということ

人が、もし生物として自分の遺伝子を残すとしたら、子供を作るしか選択肢がありません。(中略)しかし、もし自分の文化的ミームをメディア空間に残せれば、そこでは無限の命を獲得することも期待できます。例えば、エジソンやスティーブジョブズ、坂本龍馬のように、その人の人生そのものがストーリーになり、本や映画になればミーム(世代を超えて受け継がれるような文化的情報)としては、永遠の命と無数の子孫を獲得できるのです。

MEDIA MAKERS 第4章 そこにメディアが存在する意味 ー影響力の本質 より

コンテンツはメディアが存在することによって、多くの人に知られ、人々に認知され続ける。いわば、メディアはコンテンツに無限の命を与え、その存在を定義しているものかもしれません。そして、バイラルメディアもその点は同じだなぁと。

このことを鑑みると、バイラルメディア乱立の恩恵を享受しているのは、コンテンツ制作者(=クリエーター)となる。バイラルメディアで取り上げるコンテンツは面白モノやすごい話が中心なので、もしかしたらそういった人の制作意欲が高まっているかもしれない。(そういった、バイラルメディア乱立2013〜2014年の前後でのyoutube投稿数比較データ、みたいなのがあったら面白そう)

僕らは結果として、バイラルメディアのフィールドで勝負をするのをやめました。コストをかけて大量リソースの基盤を活用して運営する巨大バイラルであったならともかく、そんな大規模ではなかったし、それは当初の思いにも反していた。

 

CRYFUL が目指した場所とは

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CRYFULは徐々に、バイラルメディアとは違った道に進んでいきました。

これまでは動画PRに重きを置いたメディアでしたが、涙活など涙に関する全般に範囲を広げ、科学的な内容を書籍やインタビュー等で研究しながら記事として掲載したり、泣き美女等のオリジナルコンテンツを制作に注力していきました。実はイベントなんかもやっていたり。

つまりは、メディアとしての機能とコンテンツとしての機能、両方を持つメディアに少しずつ変化していったのです。

そしてPVを伸ばすメディアから変貌し、結果的にはそれが良かった。(逆に巨大化し過ぎてたら、PVを伸ばす事に焦点を当てるメディアになっていたかもしれません。)

次第に、広告掲載や企業からコンテンツ掲載依頼まで頂けるようにもなってきました。

僕らはバイラルメディアの舵を切りそうだったのですが、ここで別の路線に切ったきっかけが当初の思いでした。組織運営もそうなのかもしれませんが、やはり当初のコンセプトとか理念を遵守することが大事なのかもしれません。

そして、CRYFUL設立の思いを一番叶えられたと思うのが、あるメンバーの母からのメールでした。

(実際のものが出せず恐縮ではありますが)それは「いつも寝る前にCRYFUL見て感動もらってます。ありがとう」というメール。

これは運営している側としても本当に嬉しく、理念を達成でき利用してくれる方の心に何かを届けられることが、一番作って良かった!と言えることかもしれません。

お読みいただき、ありがとうございました!

米国ロサンゼルス在住29歳。米国文化、テクノロジー情報を中心に発信しています。
無類の野菜好きで健康志向。詳細プロフィールは上記リンクより。フォローお願いします。