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海外で生活した経験のある方なら、一度は利用するであろうライドシェアサービス。その最たる例は、Uberといって過言ではないだろう。
Uberは2009年、アメリカ・カリフォリニア州のベイエリアでサービスを開始し、今や世界72の国、600を超える都市で利用されているユニバーサルなサービスになっている。
日本では2014年から一時的にサービスを開始していたが、所謂「白タク」の規制などから本格的な展開には至っておらず、配車サービスとしての機能は果たせていない段階である。
そのため、日本ではまだ馴染みがない、という方もいらっしゃるかもしれない。
▲Uberの利用画面
Uberは、既に評価額700億ドル(7兆7,000万円規模)とも言われる巨大企業で、テクノロジー界隈では、2019年春の上場が噂されている。
そんなタイミングにまさしくUberに関する日本初の書籍が世に出ようとしている。
2018年12月27日発売の新著、「Uber革命の真実」である。
著者は、アメリカ西海岸の名門大学、UCLAを卒業された後、世界銀行や米ウォルト・ディズニーで活躍し、さくらインターネットの米国法人代表などを歴任された立入勝義氏。
米国在住20年、主にテクノロジー領域において、日米間の事業開発に長年従事してきた立入氏が「ソーシャルメディア革命」以来となる先端デジタル領域に関する本書を上梓する(著書6冊目)。
立入勝義氏
立入氏にUberの魅力、また新著について話を伺った。
――LyftやViaなど、アメリカでは数多くのライドシェアサービスが展開されています。Uberの競争優位性は何であるとお考えですか。
立入: サービス自体に大きな違いはないと考えますが、Uberが優れている戦略は2点あり、一つは早期に大きな資本を調達できた点が競争優位に繋がったと考えています。
もう一つは、ドライバー獲得と維持のために、多くの工夫を凝らしている点が大きいと言えます。書籍でも触れていますが、紹介ボーナス(500〜900ドル)以外に、毎週のクエストボーナスというものがあり、この点は改良され続けていますが、とても大きなポイントになっています。
Lyftにも似たような仕組みがありますが、Uberはよりビジネスライクで、常に魅力のあるインセンティブを提供して運転手に働きかけている印象を持っています。
――トイザらスを破産に追い込んだアマゾンのように、市場ではUberがイエローキャブを破産に追い込んだと言われています。既成産業からの反発について、ビジネス視点で何か感じられることはございますか。
立入: タクシードライバーが、Uberをよく思っていないというのは度々耳にする話です。実際、タクシー関係者が、街で文句を言っている場面を見たことは何度とあります。
私の住むロサンゼルスは、元々流しのタクシーがいなかったため、タクシー側の反発はそれほど大きくないと思うのですが、それでもUberが空港への乗り入れが解禁となった2015年からは、空港近くのタクシードライバーの数は減ったように思います。
まさにこれは、私が事業開発コンサルタントとしても長年経験してきた中でも感じた、テクノロジーによる規制産業の淘汰と言えると思います。
――新著「Uber革命の真実」の見所を教えてください。
立入: 本書には、Uberのビジネスモデルや世界展開についての詳細、各専門家の意見、さらに日本展開の可能性を記載しています。
専門性の高い話題ではあるものの、基礎から解説を取り入れており、テック系の方々はもちろん、ビジネススクールで学んでいる方、若手〜中堅層のビジネスマンの皆さんにぜひ読んでいただきたく考えています。
――今回Uberをテーマに本書を書かれた理由について教えてください。
立入: 私は最初の著書「電子出版の未来図」で主にアマゾンの電子出版についてを書きました。その後、出版した「ソーシャルメディア革命」では、フェイスブックやツイッターについてを書いています。
GAFAはもちろん、ダイナミックに躍動して急成長を遂げていくシリコンバレーの企業として、また日本人にとってサービスの利用が限られている分、馴染みが薄いと考えたUberに関する解説をすることで、より日本の方に理解を深めていただきたかった、というものがあります。
▲著書 ソーシャルメディア革命
さらに、立入氏は書籍執筆にあたり、実際にUberドライバーも経験している。
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立入: そうなんです。Uberの戦略や展開を考えた際に、多角的に物事を理解する必要があると思い、乗客の観点に留まらず、ドライバー側から見た視点を理解するために数百回レベルでドライバーを体験しました。
アメリカ人のライフスタイルを肌で理解したい思いがあったことや、自分自身の余暇を生産的に活用したいと考えたことも事実ですが、この取り組みで分かったことを書籍には多く触れています。
例えば、Uberドライバーをやることで、どれほどの年収が見込めるか、ドライバーはどのように評価を行うか、ドライバーにしかわからないエピソードなどを多数盛り込んでいます。
また、私の父がタクシードライバーであったので、この取り組みから家族について学ぶことも少なからず出来たと考えています。
――(ドライバーのご経験を踏まえ)乗客としてUberを利用する際に、注意されていることはありますでしょうか。
立入: 値段が高い時は、一度アプリを立ち上げ直すのは大事ですね。Lyftと比較するのも良いかも知れません。
また、サージプライシング(需要と供給で価格が大きく変動すること)は要注意ですね。ドライバーである時は大歓迎ですが(笑)、乗客としては極力避けたいところです。この辺りは書籍でも触れています。
それから、ドライバーには自分も運転した体験などを話して、リラックスしてもらったり、情報交換するよう心掛けています。
――Uber創業者のトラビス・カラニック氏がUCLAに在籍していた1997年に、立入さんは同じくUCLAのキャンパスにいらっしゃいらっしゃいました。
立入: 身近なところに将来の著名起業家がいたというのは、不思議なものです。
彼はコンピュータサイエンスが専攻、私は地理学専攻。専攻は異なりますが、共通科目もいくつかあり、GIS(地理情報システム)の授業が被っていた可能性などはありますね。
最も、彼は起業家として、途中で大学自体はドロップアウトしていますが、彼の生き方から学ぶことは多いです。もしもどこかで話す機会があれば、大学の昔話をしてみたいです。
――Uberの日本における本格展開には何が必要とお考えでしょうか。
立入: 日本のタクシー業界に大きな規制があることは重々理解をしていますが、個人的には、個人タクシーに関する取り決めや規制に打ち手があると考えています。もちろん、法改正について働きかけるロビー活動などでは協力な後ろ盾が必要となりますし、そういった総合的な取り組みが必要不可欠と思います。
――最後に、本書に対する思いについて教えてください。
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立入:Uberは2019年初旬に、アリババに次ぐ史上2番目の規模感で上場すると言われています。日本ではまだ本格展開はされておらず、日米ではタクシーに関するエクスペリエンスも、市場規模も異なりますが、消費者目線でより良いサービスが提供される未来に繋がればと思い、本書を上梓しました。
一人でも多くの日本の方に、ライドシェアやアメリカ発のサービスを知っていただきたいと考えています。
また、私の住むアメリカ・ロサンゼルス近郊のシリコンビーチもかなり活気づいてきています。事業開発コンサルタントを生業とする者としては、日本のテック企業・スタートアップに、この南カリフォルニアも拠点として認知いただけたら嬉しく思いますし、そういった活動をご協力させていただければと考えています。
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ありがとうございました。Uberのビジネスモデルや戦略、さらに日本展開可能性などもっと知りたい方はぜひ、本書をお読みください。
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立入勝義(たちいり・かつよし)
1974年、大阪府生まれ。米国在住歴20年。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)地理環境学部卒。日米間の事業開発とデジタル・マーケティングを手がけるフリーランスのコンサルタント、作家。世界銀行や米ウォルト・ディズニー、アライドテレシス、元さくらインターネット米国法人代表等を歴任。元AAJA(Asian American Journalists Association)理事。主要著書は『ソーシャルメディア革命』(ディス カヴァー・トゥエンティワン)、『電子出版の未来図』(PHP新書)など。四女の父。